
この記事は、ホープン(旧社名:プリントボーイ)が、創業以来から大切に続けているアナログコミュニケーション “お元気ですかはがき”と連動した内容となっております。
「言葉で紡ぐ」をテーマに、様々な視点から“言葉”が持つ力や、メッセージを紡いでいきます。
今回のテーマは「糸」です。「糸」という漢字は、「より合わせた糸」を象形化した文字といわれています(※諸説あり)。一本の「糸」は、編んだり縫ったりすることで、自在に形を変えていきます。
「言葉で紡ぐ」というテーマにある「紡」の字のように、「糸」は糸偏を通して、さまざまな言葉の中でも“つなぐ”イメージを与えます。
一本の糸が紡がれていくように、人の想いや記憶を紡ぐ“はじまりの線”でもある「糸」から、言葉の魅力を紐解いていきます。
“お元気ですかはがき”は、ご希望のお客様のお手元にお届けしております。
また今回の記事の中では、デザインポイントをデザイナーにインタビューしました。デザインに合う印刷紙にもこだわりましたので、ぜひご覧ください。
お元気ですかはがき 隔月受取希望のお客様はこちらから

- 言葉の背景を理解し、より深いメッセージ設計をしたい広報・教育担当者様
- デザインや言葉を使って“想い”を社内外に届けたい広報・企画ご担当者様
- 文化的背景を活かしたクリエイティブに関心のある企画ご担当者様
- 紙やデザインなどを通じて、人とのつながりを強化したい人事・広報のご担当者様

- 漢字の成り立ちや、旧字体が理解できる
- 漢字に込められた“つながり”の意味がわかる
- “糸”が、現代アートやデザインにどのように生かされているかわかる
▼【言葉で紡ぐシリーズ】その他の記事は以下よりご覧ください!


◆目次
1.漢字「糸」について
成り立ち・語源

「糸」という漢字は、旧字体である「絲(いと)」を簡略化した字です。
もともと「絲」は、古代の人々が“糸そのものの姿”を観察し、その形状や特徴を文字として写し取ったことから生まれたといわれています。
細い糸が束ねられた様子を象った形が「糸」の成り立ちになった「象形文字」の一つです。
「象形文字」とは、物の形をかたどって作られた漢字のことで、たとえば次のような文字が挙げられます。
●「象形文字」の例
糸が重なり合って一枚の布となるように、漢字もまた、一つひとつの意味や形が重なり合い、連なり、思いを伝える言葉として発展してきました。
新字体「糸」はいつから使われるようになったのか
私たちが当たり前のように使っている「糸」という漢字は、1946年に制定された「当用漢字表」をきっかけに、書きやすく・読みやすい新字体として採用されて使われるようになりました。
旧字体の「絲」は、“糸が2つ”でしたが、新字体になると簡略化され「糸」が1つで表現されるようになりました。
つながり・連なりとしての活用
「絲」という象形文字は、本来“細い線がより合わさり、連なっていく”姿から生まれました。
そのため、糸に由来する言葉には、何かと何かをつなげる・関係をつくるという意味が広がっていきます。
“つながり”のイメージは、糸偏の漢字全体に共通する特徴でもあり、糸が単なる素材ではなく、関係を生み出す象徴として日本語や文化に根づいています。
2.糸偏(へん)の「言葉」の成り立ち
「糸」が糸偏として使われる漢字には、糸を扱う所作や“つなぐ働き”を表すものが多くあります。
ここでは、「紡」「絆」「縫」「結」の漢字の成り立ちを例に、ご紹介いたします。
糸偏(へん)の漢字の成り立ち
例えば、
●紡(つむ)ぐ
「紡ぐ」は、繊維から糸をつくる行為を意味します。繊維を「錘(つむ)」という道具にかけて引き出し、より合わせて一本の糸にする動作から生まれました。
名詞の「錘(つむ)」が、やがて動詞化して「紡ぐ」になったとされます。
漢字の「紡」は、意味を表す「糸」と、音を表す「方(ボウ)」を組み合わせた形声文字に分類されます。
●絆(きずな)
「絆」も形声文字 で、「糸」「つなぐ」を意味する糸偏(へん)に、「分ける」という意味の「半(はん)」を組み合わせたものです。
もともとは「引いてつなぎ留める」「離れにくい関係」を意味し、そこから現在の「きずな(人と人の強いつながり)」という意味へ発展しました。
●縫(ぬ)う
「縫」は、「会意文字(複数の漢字を組み合わせて意味を表現する文字)」である「糸偏(糸)」と、「形声文字(意味を表す部分と音を表す部分を組み合わせて作られた文字)」である「逢(あう/ホウ)」を組み合わせてできています。このような漢字を「会意兼形声文字」と呼びます。この2つが合わさることで、糸を使って布と布を“合わせる・つなげる”ことを表す漢字として成り立ちました。
●結(むす)ぶ
「結」も形声文字で、「糸」と「吉(ケツ)」を組み合わせたものです。ひもや糸を絡ませてしっかり合わせることを意味します。
語源としては、古語の「むす(産す:生じる・生まれる)」に関係するとされ、“生じてまとまる・固まる” という意味が背景にあります。
また日本文化の文脈では、神道における概念「産霊(むすひ・むすび)」 と結びつけて、“生成・調和の象徴”として解釈されることもあります。
糸は人と人をつなぐ表現にも使用される
糸偏の漢字には、“つなぐ・合わせる・整える”といった共通するイメージがありますが、糸を扱う手仕事が、一本一本の糸を丁寧により合わせて手間を重ねながら布を生み出すように、言葉も目に見えない想いや背景を、少しずつ伝わるように紡いでいます。現代でも「赤い糸で結ばれる」という表現が残るように、人と人をつなぐものとしても用いられています。
例えば、「恋」の旧字体である「戀」は、「糸」「言」「心」から成り、“いと(糸)しいと(糸)しとい(言)うこころ(心)”を表しています。
「恋」という漢字を1つ取っても、言葉を交わしながら互いの心をつないでいくという、「恋」という感情の本質が込められています。
3.伝統と現代の融合(糸が描く表現)
画像引用元:日本糸曼荼羅協会トップページ「自分で自分を癒す糸かけ曼荼羅」
(画像引用: https://www.itomandala.com/ )※著作権は出典元に帰属します。
古来より「糸」は、人々の暮らしを支える素材として欠かせない存在でした。
衣服を織るための実用品としてだけでなく、祈りや絆を象徴するものとしても扱われ、私たちの文化や感性の中に深く根づいています。
その糸が現代では、アートにも取り入れられています。その1つが「糸かけ曼荼羅(いとかけまんだら)」です。
「糸かけ曼荼羅」は、木製の円板や板の上に等間隔で釘を打ち、そこに色とりどりの糸を規則的にかけていくことで幾何学模様が現れます。
もともとは「釘」と「糸」というごく身近な素材にすぎなかったものが、時間をかけて糸を重ねることで形が生まれていきます。
この「糸かけ曼荼羅(いとかけまんだら)」は、近年では教育や福祉の現場でも注目されています。
規則正しく糸をかけることで集中力を高め、色を選び重ねる作業は感性を刺激します。
また、ゆっくりと糸をかける時間は、心を落ち着かせ、ストレスを和らげる“アートセラピー”としても活用されています。
4.今回のデザインポイント
今回も「お元気ですかはがき」を担当したデザイナーに、デザインを落とし込む上でのポイントをインタビューしました。
デザインへのこだわり

最初にテーマが「糸」と聞いたとき、単なるモチーフとして表現するのではなく、「紡ぐ」や「結ぶ」という意味をどう表現するかを考えました。
糸は、たった一本でも誰かと誰かを結び、時に新しいものを生み出す力を持っています。
「お元気ですかはがき」は“言葉で紡ぐ”を共通のテーマとしているため、テーマを踏まえてどういう表現するかについて考えた際に、「糸そのもので言葉を描く」という着想を得ました。
「平仮名」の「いと」を赤い一本の糸で表現することで、見た人が直感的に「糸」と読めるようにデザインいたしました。
また、入口と出口は、はがきの端までつなげることで、切れないつながりを表現しました。
赤い「いと」の線は、手書き風にすることで「糸の質感」を表現するとともに、優しさを感じさせる線にしています。
一見シンプルな線ですが、実はシンプルであるが故にカーブの角度や重心の位置、余白の取り方など、何度も描き直して今回のデザインになりました。
デザインをする中で、線が少しでも太すぎると重くなってしまったり、細すぎても存在感が失われてしまうため、バランスを探る作業は、まさに糸を紡ぐように微調整していきました。
最終的に、ひらがなの「いと」がモチーフのものに決定しましたが、その他にも漢字の「糸」をイメージしたものなど複数案を出しました。
▼ひらがな「いと」Ver
▼漢字「糸」Ver
色彩へのこだわり
紙の素材も感じていただきたく、あえてデザイン面を色で塗りつぶさずに表現しました。
シンプルに文字で表現することを意識し、糸の色は「赤」にしました。
「赤」色は、情熱やエネルギーといった印象もありますが、同時に人の心やぬくもりも感じることができる色です。
“言葉で紡ぐ”をテーマに掲げる中で、想いを伝えるための色として「赤」色が最適なのではと思い、「赤」に決定しました。
また、素材の色である「白との調和」も意識し、余白の白が糸の存在を引き立てるように設計しました。
フォントへのこだわり

「お元気ですかはがき」のメインのフォントとして、「ヒラギノ丸ゴ」を使用しました。
「ヒラギノ丸ゴ」は、丸みのあるやさしい表情と、視認性の高さを両立したフォントです。
可読性の高い骨格でありながら柔らかい印象を与え、洗練された雰囲気があります。
デザインも紙素材も「糸」をモチーフにしているため、あたたかさや丁寧さを表現するのにピッタリだと思い、「ヒラギノ丸ゴ」を選定しました。
※「UDフォント」にご興味がある方は以下の記事もご覧ください。
▼「ユニバーサルデザインフォント(UDフォント)」に関する記事はこちら
今、ユニバーサルデザインフォント(UDフォント)が求められている理由とは?誰もが見やすい文字について解説
印刷紙へのこだわり
今回のはがきには、「サーキュラーコットンペーパー」を選びました。
この紙は、廃棄される繊維から作った再生紙で、今回のテーマである“糸”や生地、綿繊維が素材として使われております。
こちらの紙を使用する際には、世界中で破棄される膨大な繊維ゴミを資源として活用するため、2021年9月に設立した「一般社団法人 サーキュラーコットンファクトリー」が発行する認証マークを表示することができます。
原料には、廃棄された綿繊維(コットン)を50%、木材パルプを50%使用し、印刷適性にも優れています。
用途に応じて4種類の厚みを展開していますが、今回のはがきには、四六判(ボード連)の連量13.5kgの紙を使用しました。
〇おすすめの利用シーン
・ブランドの世界観を伝える名刺・ショップカード制作に
・SDGsやサステナブル活動を発信するブランドブックや会社案内に
・ルックブック・カタログなどアパレル販促物の質感向上に
・オーガニック商品・自然素材を扱う店舗のパッケージやタグに
・リサイクル原料や循環型素材を求める企業の印刷物全般に
廃棄繊維を紙に再生することで、廃棄の抑制・資源の有効活用・CO₂排出量の削減など、循環型経済(サーキュラーエコノミー)への貢献ができます。
こちらの紙を使用することで、サステナブルな姿勢を、「紙」を通じてアピールすることができます。
以下のフォームから「お元気ですかはがきのサンプル」をお申込みいただけましたら幸いです。
印刷・加工のこだわり
「お元気ですかはがき」は、デザインしただけでなく、印刷し断裁する工程があります。印刷から断裁までそれぞれの工程で確認を行っています。
まずは数枚印刷し、発色や画質に問題がないかを確認していきます。
デザイン段階での色校正では、モニター上のデータと実際の紙への印刷結果を照らし合わせ、色の再現度を確認しています。
問題がなければ、本番の印刷を行います。その後、断裁の工程に移ります。
断裁する際の圧力で印刷物に傷が付かないように、上下に紙を敷いて断裁します。
こうした工程の積み重ねによって、お元気ですかはがきが完成いたします。
心を込めて制作し、お手元に届く1枚のはがきが完成します。(↓今回のお元気ですかはがきの断裁担当:Y)
こうして様々な工程を経て作られた「お元気ですかはがき」。ぜひお手元にお受け取りいただけましたら幸いです。
5. まとめ
「糸」という文字は、細い線がより合わさり、つながり、広がり、形を生み出していく姿を象徴しており、古くから人々の暮らしや文化に深く根づいてきました。
糸偏の漢字に多く見られる “紡ぐ・結ぶ・縫う・つなぐ” といった意味は、言葉やデザインの世界にも通じています。それはまるで、目には見えない想いや記憶を、少しずつ形へと編んでいくプロセスのようでもあります。
今回の「お元気ですかはがき」では、糸の象徴性を赤い一本の線で表現し、“はじまりの糸口”として言葉を描くデザインに仕立てました。
さらに、廃棄繊維から生まれた「サーキュラーコットンペーパー」を採用することで、素材そのものにも“糸の物語”を感じていただけるように選定しました。
糸が布を生むように、言葉もまた、人の心をつなぎ、新しい関係や意味を生み出すものです。
古くからの糸の文化と、現代のデザイン、アート、サステナビリティが重なることで、より深いメッセージが伝わっていくように、今回のはがきが、そんな“つながりを紡ぐ一枚”になれば幸いです。
ホープン(旧社名:プリントボーイ)では、今回のようなお手紙・ダイレクトメールの制作などの制作をご支援しております。
コミュニケーションに関する、コンテンツ制作を企画から制作・印刷までワンストップでサポートしておりますので、お気軽にご相談ください。
\コミュニケーションに関するご相談は、ホープンにお気軽にご相談ください/
※こちらもあわせてお読みください。
▼「言葉で紡ぐ」シリーズの前回までの記事はこちら












