【言葉で紡ぐシリーズ】其の六「大和歌」

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公開日:2026/03/24
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【言葉で紡ぐシリーズ】其の六「大和歌」

この記事は、ホープンが創業以来、大切に続けているアナログコミュニケーション“お元気ですかはがき”と連動した内容となっております。“お元気ですかはがき”は、ご希望の方にもお届けしております。

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「言葉で紡ぐ」をテーマに、“言葉が持つ力”や、その背景にある文化を紐解いていきます。今回のテーマは「大和歌(やまとうた)」です。
「大和歌」とは、日本固有の詩歌を指す総称です。中国から伝来した「漢詩」と区別する呼び名として用いられました。
「大和歌」は、“言葉で説明をする”のではなく、受け取る人の心の中にある感情や想像を引き出し、表現の世界をより豊かに広げてくれます。ぜひ大和歌の魅力を感じていただけましたら幸いです。


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◆目次
    1. 「大和歌」とは?|日本ならではの「言葉の表現手法」
    2. 「大和歌」を支える「大和言葉」
      1. 例①幸先が良い
      2. 例②心待ちにしています
      3. 例③うらら
    3. 「大和歌」の魅力 
      1. 自然に託して想いを伝える、余情の美学
      2. 時代を超えて、読み手の中で生き続ける
      3. 何気ない日常も、かけがえのない瞬間に
    4. 春を感じる「大和歌」をご紹介
      1. 例①春の日の うららに照らす 垣根には とも待つ雪ぞ 消えかてにする
      2. 例②見渡せば 柳桜を こきまぜて 都ぞ春の 錦なりける
    5. 今回の「お元気ですかはがき」のデザインポイント
      1. デザインへのこだわり
      2. 色彩へのこだわり
      3. フォントへのこだわり
        1. 大和歌の部分|花蓮華-L
        2. 説明文の部分|UD黎ミン-M
      4. 印刷紙へのこだわり
        1. バガスペーパーとは?
        2. バガスマークとは?
    6. まとめ|大和歌の想像に委ねる言葉の力をコミュニケーションのヒントに

1.「大和歌」とは?|日本ならではの「言葉の表現手法」

「大和歌(やまとうた)」とは、日本固有の詩歌を指す総称です。905年ごろに成立した『古今和歌集』の巻頭には、紀貫之が仮名(ひらがな)で記した序文「仮名序」があります。
そこには「やまとうたは、人の心を種として、よろづの言の葉とぞなれりける」と書かれ、中国から伝来した「漢詩」と区別する呼び名として「日本の歌=大和歌」が示されています。

漢詩の例として、『万葉集』巻五に収録の「梅花の歌」の序文をご紹介します。

初春令月 氣淑風和 梅披鏡前之粉 蘭薫珮後之香(大伴旅人)

ご紹介した例でもご認識いただけるように「漢詩」は、漢字のみで構成され、中国詩の形式や韻律に則って詠まれました。整った対句や格調の高さが特徴です。
この漢詩で使われている「令」と「和」を取って、「令和」の元号になったという説もあります。

一方で、日本語の音のリズムに基づいて詠まれたのが「大和歌」です。例えば、1105年ごろに成立した『堀河院百首』に以下のような歌があります。

春の日の うららに照らす 垣根には
とも待つ雪ぞ 消えかてにする(藤原基俊)

4.春を感じる「大和歌」をご紹介」で詳細はご案内いたしますが、大和歌は、「ひらがなも用いる形式」で詠まれています。
漢詩が「漢字文化圏の思想や様式」を受け継いだ表現であったのに対し、大和歌は、「日本語の響きや感性を基盤に、自然や季節の美、人の心の揺れ」などを三十一音に託して表現しました。

7世紀後半(飛鳥時代)から8世紀後半(奈良時代)にかけて成立したとされる日本最古の和歌集『万葉集』には、「長歌」「短歌」「旋頭歌」など、さまざまな形式の歌が収められていましたが、
平安時代に入ると、「五・七・五・七・七」の「三十一音」の形式が中心となり、日本の歌は「和歌」として体系化されていきました。そしてその流れは、後に「短歌」へと受け継がれ、「連歌」や「俳句」の成立に影響を与えました。

2.「大和歌」を支える「大和言葉」

「大和歌」の根底にあるのが、日本固有の言葉である「大和言葉(和語)」です。漢字や外来語とは区別され、訓読みの語として用いられることが多いのが特徴です。
やわらかな響きと余韻をもつ「大和言葉」があったからこそ、限られた形式の中でも、深い情感を表現することができたといえるでしょう。

それではここで、大和言葉の例を3つご紹介します。

例①幸先が良い

「幸先が良い」という言葉には、単に「良いことがありそう」という意味以上の明るさが感じられます。“幸せが先にある”という語の組み立てそのものが、これから始まる未来をやわらかく照らしてくれるようです。
似たような表現として「好調な滑り出し」と言い換えることもできますが、「幸先が良い」と言ったほうが、どこか温かみのある前向きな情景が広がります。

例②心待ちにしています

「心待ちにしています」は、期待しながらも静かにその時を待つ心情を表す言葉です。「期待しています」と比べると、より控えめで奥ゆかしく、それでいて期待の深さがにじみます。
「お誘いを心待ちにしております」と言えば、相手を立てながら、その時を待っている様子を表現することができます。「大和言葉」の言葉のやわらかな響きは、そのまま人との距離感にも表れているといえるでしょう。

例③うらら

「うらら」は、春の日差しの明るさや穏やかさを表す言葉です。「晴れている」と言うよりも、「うらら」と表現することで、やわらかな光やぬくもりを感じることができます。
音そのものが春の空気をまとっているようで、意味を説明しなくても、響きから情景を思い浮かべることができるのも、大和言葉の魅力といえるでしょう。

大和歌は、こうした「大和言葉」によって支えられています。意味を正確に伝えるだけでなく、音や余韻、そして情景までも含めて届けます。言葉を通して、相手の心にそっと触れる繊細な表現文化が、時代を超えても受け継がれています。

3.「大和歌」の魅力

3-1.自然に託して想いを伝える、余情の美学

大和歌には、自然や情景に感情を託す表現が多く見られます。寂しさをそのまま言い切るのではなく、月や花、風の様子に重ねて詠みます。
すべてを説明しないことで、言葉の中に「余白」が生まれます。読み手はその余白に、自らの経験や感情を重ねることができるのです。

また、平安の宮廷では、和歌を贈り合うことで思いを伝える文化がありました。言葉で言い尽くすのではなく、言葉に込めた情景や余韻を通して、相手の想像に託していました。

3-2.時代を超えて、読み手の中で生き続ける

大和歌は、千年以上前に詠まれた作品も多い中、現在も読み継がれています。人との別れや季節の移ろいなど、時代を超えて共有される感情が数多く詠まれています。
和歌では多くの場合、感情を直接説明するのではなく、情景に託して表現します。説明しすぎない表現を選ぶことで、読む人によって受け取り方が変わるという魅力があります。

読み手の解釈によって意味が広がる文学であるため、何度読んでも新しい気づきが生まれるところに、大和歌の奥深さがあるといえるでしょう。

3-3.何気ない日常も、かけがえのない瞬間に

大和歌は、特別な出来事だけを詠むものではありません。朝露や夕暮れ、山影など、自然の移ろいを詠んだ歌も多く見られます。
普段は見過ごしてしまいそうな景色を言葉にすることで、何気ない瞬間を「心に残る出来事」へと変えていきました。

読み手の解釈によって意味が広がる文学であるため、何度読んでも新しい気づきが生まれるところに、大和歌の奥深さがあるといえるでしょう。
祝いの場や節目で言い換え表現が多用されるのも、その名残です。

4.春を感じる「大和歌」をご紹介

大和歌には、四季折々の情景を詠んだ歌が数多くあります。なかでも春は、特に豊かに表現されてきました。
花の色、光のやわらぎ、空気のぬくもり、そして人の心の揺れ。「大和言葉」を基調に、情景の中に想いを重ねる表現が多く見られます。

ここでは、この時期にふさわしい春の大和歌を二首ご紹介します。

例①春の日の うららに照らす 垣根には とも待つ雪ぞ 消えかてにする

この歌は、やわらかな春の光に照らされながらも、どこか冬の名残を感じさせる、季節の境目を詠んだ一首です。鎌倉時代の勅撰和歌集『続後撰集」に収められており、藤原基俊の作とされています。
春の日差しが垣根をやさしく照らしていますが、その足元にはまだ雪が残っています。春の訪れを感じながらも、雪はすぐには消えないという、季節の移ろいが描かれています。

ここで使われている「うらら」は、大和言葉ならではのやわらかな響きを持つ言葉です。
強い光ではなく「うらら」と表現することで、包み込むような穏やかな日差しが感じられます。視覚だけでなく、肌に触れるぬくもりまで想像させる表現です。

また、「とも待つ雪ぞ」という言い回しには、雪が誰かを待っているかのような含みがあります。雪そのものを説明するのではなく、そこに人の心を重ねることで、冬を惜しむような心の揺れを表現しています。

「消えかてにする」という言葉も、すぐには消えきらない様子をやわらかく伝えています。限られた音数の中に、光と雪、そして時間の流れが織り込まれた一首です。

例②見渡せば 柳桜を こきまぜて 都ぞ春の 錦なりける

この歌は、『古今和歌集』に収められた春の代表的な一首で、素性法師の作とされています。
冒頭の「見渡せば」で広がるのは、視界いっぱいに広がる都の景色です。「春が来た」と直接言わず、柳の緑と桜の花という具体的な情景によって、自然と春の訪れを感じ取ることができます。

また、「こきまぜて」は漢字では「漕き交ぜて」と書き、色彩が入り交じる様子を表す言葉です。柳の淡い緑と桜の花色が溶け合うように重なり合い、景色に動きを与えています。
結びの「錦」は、さまざまな色糸で織られた華やかな織物のことです。都の景色を錦に例えることで、春色に染まる街並みを一枚の織物のように描き出しています。
言葉を重ねすぎずに情景を提示することで、余白を生み出し、読み手の中に春の情景を想像させています。そこに、この歌の奥ゆかしさが感じられます。

「大和歌」は、すべてを語り尽くすのではなく、余白を残し、受け取る人の想像に委ねる表現です。「言葉で紡ぐ」というテーマにも通じるものがあり、言葉の豊かな表現のあり方を教えてくれる存在といえるのではないでしょうか。

5.今回の「お元気ですかはがき」のデザインポイント

5-1.デザインへのこだわり

5-1.デザインへのこだわり

今回のデザインは、桜の開花時期も重なり、「大和歌」の中の春の歌を踏まえて、デザインを検討いたしました。桜の花びらには緑の葉を散らし、爽やかな春の風を感じていただけるよう意識して調整いたしました。日本の四季や自然の美しさを表現しています。
また、大和歌の良さは、短い言葉で「余白」を残しながら伝えて、読み手の方に考えて頂くという特長があるため、あえて余白を活かしたレイアウトにしました。

※その他デザインも作成いたしましたが、最終的に今回のデザインになりました。

お元気ですかはがき_その他デザイン案(大和歌)

5-2.色彩へのこだわり

今回のデザインでは、日本の春を象徴する「桜色」を基調にデザインしました。やわらかなピンクのグラデーションと、爽やかな緑をアクセントとして組み合わせることで、春の空気感や爽やかさを表現しました。
背景をやさしい色合いにすることで、中央の和歌の文字が引き立つようにバランスを調整しています。

全体として、華やかさがありながらも落ち着きのある色彩設計にしたことで、日本文化の品格や奥ゆかしさを感じていただけるように色彩にもこだわりました。

5-3.フォントへのこだわり

5-3.フォントへのこだわり
今回のはがきでは、世界観を表現するために、2つのフォントを使い分けました。

(1)大和歌の部分|花蓮華-L
はがき中央の大和歌には、「花蓮華-L」を採用いたしました。
「花蓮華」は、判別性を備えながら、筆の流れや筆圧の強弱を感じられる、やわらかな表情を持つ書体です。手書きのような自然な筆致が特徴で、リズムが生まれやすいデザインで、大和歌の訴求にぴったりだと思い採用しました。

(2)説明文の部分|UD黎ミン-M
大和歌の説明文には、「UD黎ミン- M」を採用いたしました。
「UD黎ミン」は、ユニバーサルデザインの考え方を取り入れて設計された、「ユニバーサルデザインフォント(UDフォント)」の明朝体で、可読性の高さが特徴の書体です。

文字の骨格や字面のバランスが丁寧に設計されていて、小さなサイズでも読みやすく、長文でもストレスなく読めるよう工夫されています。
また、明朝体ならではの上品さや落ち着きも備えているため、日本文化や言葉を扱う今回のデザインとも相性が良く、大和歌の背景を支える説明文で使用しても、自然に調和しました。

※「UDフォント」にご興味がある方は以下の記事もご覧ください。

▼「ユニバーサルデザインフォント(UDフォント)」に関する記事はこちら
今、ユニバーサルデザインフォント(UDフォント)が求められている理由とは?誰もが見やすい文字について解説

5-4.印刷紙へのこだわり

はがきの用紙にもこだわりまして、今回は「バガスペーパー」の用紙の一つである「ラフバガス」を採用いたしました。

(1)バガスペーパーとは?

(1)バガスペーパーとは?画像素材提供:五條製紙株式会社

サトウキビの搾りかす(バガス)を原料の一部として活用した紙のことです。サトウキビは砂糖を製造する際に大量の搾りかすが発生しますが、このバガスをパルプ原料として再利用することで、資源の有効活用につながります。

サトウキビからバガス紙ができるまで画像素材提供:五條製紙株式会社

通常の紙は木材パルプを主原料としていますが、バガスペーパーは農業副産物を活用することで、森林資源への負荷を軽減できる素材として注目されています。こうした背景から、環境配慮型の印刷物やパッケージなどで採用される機会が増えています。

また、「ラフバガス」は自然素材ならではの、やさしい風合いと少しラフな質感が特徴です。桜の柔らかで温かみのあるデザインと相性が良く、やさしい印象を演出することができました。

(2)バガスマークとは?

(2)バガスマークとは?画像素材提供:五條製紙株式会社

バガスペーパーの使用にあたり、「バガスマーク」もはがきに掲載しています。
このマークは、「五條製紙株式会社」様がご提供している「バガスマーク」です。サトウキビの搾りかす(バガス)を原料とした紙を使用していることを示し、環境配慮型の素材であることを伝えるための表示マークです。

パッケージや印刷物などに表示することで、製品に使用されている紙がバガスパルプを活用した紙であることを伝えることができます。
近年では、環境配慮への取り組みを企業活動の中で可視化することが重要視されており、こうしたマークを通じて、印刷物からサステナブルな取り組みを伝えることができます。

※バガスマークの利用には事前申請が必要です。使用条件やガイドラインは、以下のページをご覧ください。
バガスマーク使用申請|五條製紙株式会社

実際の紙の質感や風合いは、画面では伝わりにくい部分でもあります。
ぜひ紙の質感などは実際の紙でご確認頂きたく、ぜひお気軽に以下のフォームから「お元気ですかはがきのサンプル」をお申込みいただけましたら幸いです。

お元気ですかはがき サンプル請求フォーム

6.まとめ|大和歌の想像に委ねる言葉の力をコミュニケーションのヒントに

今回ご紹介した「大和歌」は、感情や状況をはっきりと言い切るのではなく、情景や言葉の響きを通して、読む人に委ねる表現を大切にしてきました。
そんな「大和歌」を支えている「大和言葉」は、音や響きのやわらかさで言葉に温かみを与え、受け取る人の心の中に自然と情景を浮かび上がらせます。

「大和歌」は、限られた文字数の中で表現されながらも、豊かな情景や想いを想像させる日本独自のコミュニケーションの一つとして、「言葉で紡ぐ」表現の可能性を感じさせてくれます。

現代では、何かと「タイパ(タイムパフォーマンス)」が求められる場面も増えています。しかし、すべてを言葉で説明しきるのではなく、あえて「余白」を残し、相手の想像に委ねる姿勢は、現代のコミュニケーションにも通じるヒントになるかもしれません。「言葉で紡ぐ」際のヒントとして、ぜひ日々の言葉選びの参考にされてみてはいかがでしょうか。

ホープンでは、今回の「お元気ですかはがき」のような、コミュニケーションツールをご支援しております。
印刷だけでなく、動画制作やWeb制作までワンストップで伝わるコミュニケーションツール制作をサポートしておりますので、お気軽にご相談ください。

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▼「言葉で紡ぐ」シリーズの前回までの記事はこちら
お元気ですか【言葉で紡ぐシリーズ】の記事
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【日本の心を感じる文様シリーズ】日本の伝統文様シリーズ


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