
Webサイトや資料を制作する際、「見やすさ」を意識している中で、「色の見え方」まで十分に配慮できていますでしょうか。公益財団法人日本眼科学会の先天色覚異常に関する情報によると、先天色覚異常は遺伝性の特性であり、日本人では男性の約5%、女性では約0.2%にみられるとされています。
これは決して稀なケースではなく、社会の中に一定数いらっしゃる“色覚の多様性”です。「カラーアクセシビリティ」への配慮は、単なるデザインの問題ではなく、企業の信頼性や情報伝達の質に直結する重要なテーマです。今回は、「カラーアクセシビリティ」のポイントを解説いたします。
◆目次
1.カラーアクセシビリティとは?
1-1.色覚多様性とは
カラーアクセシビリティとは、「色の見え方が異なる人にも情報が正しく伝わるように設計すること」を指します。色弱という言葉が使われることがありましたが、現在では「色覚多様性」という表現が広まりつつあります。
色の見え方は、白黒のように単純に違うのではなく、特定の色の区別がつきにくいなど、個人差があります。
特に日本では男性の約5%が、赤と緑の判別が難しい特性を持つといわれています。これは決して少数ではありません。
そのため、「赤だから伝わる」「緑だから分かる」という前提は、すべての人に通用するわけではないというのを、まず認識することが大切です。
1-2.なぜ企業に求められているのか
近年、SDGsやDEI(多様性・公平性・包摂性)の観点からも、アクセシビリティへの配慮は企業姿勢として重要視されています。また、Webアクセシビリティの国際基準である「WCAG(Web Content Accessibility Guidelines)」では、色のコントラストや色依存の情報設計に関する基準が明確に定められています。WCAGは、インターネット技術の標準化を行う国際団体W3Cが策定しているガイドラインです。現在は「Web Content Accessibility Guidelines (WCAG) 2.2(※)」が最新バージョンです。カラーアクセシビリティは、Webアクセシビリティ全体の一部にあたります。
公共機関のみならず、民間企業においても「誰にとっても使いやすい設計」は競争力の一部となりつつあります。
「カラーアクセシビリティ」は、「ウェブアクセシビリティ」全体の一部にあたります。 Web全体のウェブアクセシビリティ対応について詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。
▼「ウェブアクセシビリティ」に関する記事はこちら
ウェブアクセシビリティとは?対応すべき4つの理由
※参照:Web Content Accessibility Guidelines 2.2,W3C World Wide Web Consortium Recommendation (5 October 2023)
(最新版:https://waic.jp/translations/WCAG22/)
2.配慮すべき具体的なポイント
2-1.コントラスト比を確保する
コントラスト比(Contrast Ratio)とは、2つの色の「明るさ(輝度)」の差を数値化したものです。
背景色と文字色の差が小さいと、視認性は大きく低下します。特に「薄いグレーの文字 × 白背景」は、洗練された印象を与える一方で、多くの人にとって読みづらい組み合わせです。
WCAG「解説書 達成基準 1.4.3:コントラスト (最低限) (レベル AA)」の達成基準では通常テキストに、4.5:1以上のコントラスト比がある。と記載されています。
コントラストを出す際には、感覚で行うのではなく、客観的な数値で検証しながら調整していくことが重要です。
2-2.色だけで情報を伝えない
「エラーは赤」「成功は緑」という設計はよく見られますが、色だけに依存すると情報が伝わらないケースがあります。
例えば、
・赤文字だけでエラーを示す
・グラフを色分けのみで説明する
・リンクが色の違いだけで示されている
このような設計だと、伝わらない場合があるため、「カラーアクセシビリティ」に配慮するのであれば改善が必要です。
テキストの表記、アイコン、下線、パターンなどを併用し、情報をより確実に伝わる工夫を行いましょう。
その他配慮すべきこととして、「色」だけでなく「文字の見やすさ」も重要な要素です。様々な方に配慮したフォントとしては「ユニバーサルデザインフォント(UDフォント)」があります。
UDフォントについてご興味がある方は以下の記事をご覧ください。
▼「ユニバーサルデザインフォント(UDフォント)」の詳細についてはこちら
今、ユニバーサルデザインフォント(UDフォント)が求められている理由とは?
2-3.赤×緑の組み合わせに注意

赤と緑は補色関係にあり、視覚的に目立つ配色とされますが、色覚特性によっては区別が難しい組み合わせになってしまいます。重要なのは「色相の違い」ではなく「明度差」です。
「彩度」を上げるのではなく、明るさに差をつけると、判別性は大きく向上します。
次の章では、「色相」と「明度差」についてご説明いたします。
3.色相と明度差とは?|“見える配色”の設計原則
「カラーアクセシビリティ」を考える際には、「どの色を使うか」だけでなく、「色の見え方を決める要素(色相・明度・彩度)」を理解した上で設計することが重要です。
特にポイントになるのが、「色相(色み)」と「明度(明るさ)」の違いです。
ここでは「色相が違うのに見分けづらいのはなぜか」「どうすれば見える配色になるのか」について、整理していきます。
3-1.色相とは?|色相の違いだけでは識別できない

色相(しきそう)とは、赤・青・緑・黄といった「色み(何色か)」の違いを指します。
デザインでは「赤と緑は違う色だから見分けられる」と考えがちですが、“色相の違い=誰でも区別できる”というわけではありません。
その理由は、色の区別が「色み」だけでなく、目の特性や環境要因にも左右されるためです。
例えば、色覚特性によっては特定の色相同士が近く見え、別の色として認識しづらいことがあります。
赤×緑以外の例としては、以下のような組み合わせです。
・青と紫
・緑と青緑(シアン寄り)
つまり、「色を変えれば伝わる」ではなく、「変えたつもりでも伝わらない」ことが起こってしまいます。
この前提を持たないまま配色してしまうと、「凡例」「グラフ」「ボタンの状態」などの情報が、一部の人に届かなくなってしまいます。
3-2.明度とは?|判別性を高めるカギは“明度差”

「明度(めいど)」とは、色の「明るさ(どれくらい白に近いか、黒に近いか)」の度合いを指します。
「アクセシビリティ」の観点でより重要なのは、「色み(色相)」よりも、「明るさの差=明度差」です。
人は色を見分けるときに、実は「色み」より先に、「明るさの差」で形や文字を認識しています。
そのため、色相が多少近くても、明度差が大きければ判別しやすくなります。
例)
・濃い青 × 明るい黄色(明度差が大きく見分けやすい)
・黒 × 白(明度差が最大で最も読みやすい)
一方で、色相が違っても「明度が近い」と判別が難しくなります。
例)
・濃い赤 × 濃い緑(どちらも暗く、差が小さい)
・明るい青 × 明るい紫(どちらも明るく、差が小さい)
アクセシビリティの観点では、“明度差”が十分かを数値でチェックし、デザインすることが必要です。
3-3.彩度とは?|彩度を上げても解決しない

「彩度」とは「色の鮮やかさ」のことです。例えば、デザインの中で「目立たせたいから鮮やかにする」こともありますが、アクセシビリティの観点では、彩度を上げることは、識別性が上がることと必ずしも一致しません。
なぜなら、「彩度」を上げても「明度差が変わらない」場合があるからです。
例えば、「薄い赤を、もっと鮮やかな赤にする」だけでは、背景との明るさの差が小さい場合、「可読性(読みやすさ)」は改善しません。
もし改善を行うなら、以下のような設計が大切です。
・明るい色 × 暗い色の組み合わせにする
・背景よりも文字や図形を十分に暗く(または明るく)する
・“強調”は色相変更ではなく、明度差の設計で行う
例)
・白背景 × 薄いグレー文字(どちらも明るく差が小さい → 読みにくい)
・白背景 × 濃いグレー or 黒文字(明度差が大きい → 読みやすい)
コントラスト比は、この「明るさの差」を客観的に確認するための指標になります。
3-4.ブランドカラーと両立させるための考え方
「カラーアクセシビリティ」は、必ずしも「ブランドカラーを変える」ことではありません。
ポイントは、ブランドカラーを“主役として使う場面”と、“情報を読む場面”で分けることです。
例えば、以下のように役割を整理すると、ブランドを保ちながら視認性を上げることができます。
・ボタンや帯などの背景:ブランドカラー
・文字色:背景に対して十分なコントラストを確保(白 or 黒など)
・補助色・枠線・影:明度差を補強するために活用
アクセシビリティ対応は、ブランドを弱めるのではなく、ブランドのメッセージを「正しく伝わる形」に整えるための設計になります。
カラーアクセシビリティの配色設計では、「何色を使うか」以上に、どれだけ“明るさの差”をつけられているかが重要です。
色相だけに頼らず、明度差(=コントラスト)まで設計することで、より多くの人に伝わるデザインになります。
4.その他見落とされがちな実務上のアクセシビリティリスク
これまでのご紹介により、配色設計では「明度差の確保」が重要だとお分かりいただけたかと思いますが、実際の制作現場では、理論を理解していても“見落とし”が発生するポイントがあります。
ここからは、トラブルが起きやすい箇所を整理しご紹介いたします。
4-1.UIパーツのコントラスト不足
「アクセシビリティ」というと「文字」に注目しがちですが、見落とされやすいのが「UIパーツ(操作要素)」です。
例)
・入力フォームの枠線が背景と同化している
・ボタンの境界が不明瞭
・チェックボックスやラジオボタンが見えにくい
・アイコンの線が細く淡い
これらは「読めるかどうか」ではなく、“操作できるかどうか”に直結する問題になってしまいます。
特に淡色ベースのデザインでは、境界線や輪郭が弱くなりやすいため注意が必要です。
「テキスト」だけでなく、「非テキスト要素」も視認性を確保できているか、確認するようにしましょう。
4-2.背景画像上の文字は読みにくくなるリスクが高い

写真やイラストの上に文字を載せるデザインは多く見られますが、アクセシビリティの観点では不安定になります。
なぜならば、背景画像は明るさが一定ではないため、ある部分では読めるが、別の部分では読めないという状態が発生しやすくなるからです。
特に以下のケースは注意が必要ですので気を付けるようにしましょう。
例)
・ヒーロー画像上のキャッチコピー
・バナー広告
・イベント告知ビジュアル
この場合の対策としては、
・半透明のオーバーレイ(※)を敷く
(※)画像、映像などに透過した色、テキスト、アイコン、または他の画像を重ねて表示する技法のこと
・文字用の背景ブロックを設ける
・縁取りやシャドウを加える などの対応が必要です。
カラーアクセシビリティへの配慮する際には、“識別できる設計になっているか”を意識して制作することが大切です。
カラーアクセシビリティへ対応する際には、デザイナー個人の意識に任せるのではなく、以下のような仕組み作りも検討するようにしましょう。
●準備したい仕組み
・ガイドラインの策定
・校正時のチェック項目化
・トンマナ設計と同時に検証
5.まとめ|アクセシビリティは“コスト”ではなく、ブランド価値を高めるための投資です
情報が正しく伝わることは、単に“読みやすくなる”という意味だけではありません。
多様化する社会の中で、様々な方に配慮する取り組みの一つとして「カラーアクセシビリティ」への対応は必要不可欠になっています。
配慮が設計に組み込まれている企業こそが、信頼され選ばれていくのです。誰にとっても理解しやすい設計を行うことで、
・企業の誠実さや信頼性
・情報設計力の高さ
・ブランド価値 を伝えることができます。
「アクセシビリティ」への対応は、CSRや企業の社会的責任の観点からも重要性が高まっていますので、積極的なアクセシビリティへの対応をご検討されてみてはいかがでしょうか。
ホープンでは、「カラーアクセシビリティ」に対応したLP制作もお客様のご要望に合わせてご案内することも可能です。
印刷からWeb制作まで伝わるコンテンツ制作をサポートさせて頂いておりますので、お気軽にご相談ください。

▼参考文献
・先天色覚異常|公益財団法人日本眼科学会
・ウェブコンテンツアクセシビリティガイドライン(WCAG)2.2W3C勧告 2024年12月12日
・WCAG解説書「達成基準 1.4.3:コントラスト (最低限) (レベル AA)」
・ウェブコンテンツアクセシビリティガイドライン(WCAG)2.1W3C勧告 2025年5月6日
・デジタル庁「Webアクセシビリティ入門」(2025年10月16日)
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