
コロナ禍を経て急速に広がった在宅勤務(リモートワーク)は、現在も多くの企業で活用されています。
完全出社に戻す企業もある一方で、「柔軟な働き方を提供できるかどうか」が従業員の定着や採用競争力に直結する時代になりました。
ただし、リモートワークには課題もあります。孤独感、評価の不安、成長機会の不足…。こうした問題を放置すれば従業員エンゲージメントは低下し、生産性や定着率にも悪影響を与えかねません。
それでは、在宅勤務下でもエンゲージメントを高めるにはどうすればよいのでしょうか。今回の記事では、施策事例やポイントを交えながら解説します。
◆目次
1.在宅勤務が直面する典型的な課題
在宅勤務は、通勤時間の削減や柔軟な働き方を可能にするなど多くのメリットをもたらします。
しかし同時に、オフィス環境では気づきにくかった問題が浮き彫りになることも少なくありません。
ここでは、多くの企業や従業員が直面する代表的な課題を整理します。
1-1.雑談や偶発的な交流が減り、孤独感や疎外感を感じやすい

オフィス勤務であれば、同僚とのちょっとした雑談や休憩時間の会話が自然に生まれます。
これらは単なる雑談に見えても、実際には心理的安全性を高めたり、チームの一体感を醸成する大切な役割を果たしています。
しかし在宅勤務では、そうした「偶発的な交流」が激減し、同僚との関係性が希薄になりやすいのが現実です。
特に新入社員や異動直後の従業員は、職場に溶け込みにくく孤独感を覚えやすい傾向があります。結果として「会社に属している実感が薄れる」という声も少なくありません。
1-2.働いている姿が見えないため、評価が不透明だと不安になる
リモートワークでは「誰がどのように働いているか」が見えにくくなります。
オフィスであれば努力や姿勢が目に入りやすい一方で、在宅環境では成果物だけで評価されるケースが増えるため、「自分は正当に評価されているのか?」という不安が高まりがちです。
さらに、上司やチームメンバーがどのような基準で評価しているかが曖昧な場合、公平性への疑念が生じます。
評価の不透明感は、モチベーションの低下やエンゲージメントの喪失に直結するリスクがあるのです。
1-3.長時間座りっぱなしで、運動不足や健康面のリスクが増える

在宅勤務では通勤やオフィス内での移動がなくなり、気づかないうちに「座りっぱなし」になる時間が増えます。
これにより、腰痛や肩こり、目の疲れといった身体的な不調が起こりやすくなる他、運動不足による生活習慣病リスクも指摘されています。
また、生活と仕事の境界が曖昧になりやすいため、就業時間外もパソコンの前に座り続ける「過剰労働」状態に陥る人も少なくありません。
心身の健康が損なわれれば、生産性だけでなく離職意向にもつながってしまいます。
1-4.上司や同僚の働き方が見えず、キャリア成長の機会が乏しいと感じる
オフィスでは上司や先輩の働きぶりを間近で観察でき、そこから自然と学べる「見て学ぶ機会」がありました。
しかし、リモートではそうした非言語的な学びが減り、特に若手社員は「成長のチャンスを得られにくい」と感じやすくなります。
また、オンライン会議では限られたメンバーしか発言しない場合も多く、経験の浅い従業員が「学ぶ場に参加している」という感覚を持ちにくい点も課題です。
結果としてキャリア開発やスキルアップに不安を抱き、エンゲージメント低下につながる恐れがあります。
1-5.理念や方針が伝わりにくく、企業文化が希薄化する
リモート環境では、会社の理念や方針、企業文化といった「目に見えにくい要素」が浸透しにくくなります。
オフィスであれば掲示物やイベント、上司の言動などを通じて自然に感じ取れる文化的なメッセージも、オンラインでは意識的に伝えなければ届きません。
企業文化が希薄になると、従業員は「自分がどんな組織に属しているのか」が見えにくくなり、帰属意識の低下を招きます。
特に採用したばかりの社員にとっては、「この会社で働く意味」が腹落ちしないまま時間が過ぎてしまう危険性もあります。
在宅勤務は働き方の自由度を高める一方で、孤独感や評価不安、健康問題、成長機会の不足、文化の希薄化といった課題を伴います。
これらの問題に適切に対処しなければ、従業員のモチベーションやエンゲージメントは大きく損なわれかねません。
リモート環境においてエンゲージメントを高めるためには、こうした課題を正しく認識し、仕組みとして解決策を設計することが重要です。
2.在宅勤務でエンゲージメントを高める5つの方法
在宅勤務(リモートワーク)は当たり前の働き方となった一方で、孤独感や評価不安、健康面のリスク、キャリア形成の不透明さ、そして企業文化の希薄化といった課題も浮き彫りになっています。
こうした状況のままでは、従業員のエンゲージメント低下や離職につながりかねません。リモート環境下でも従業員が「この会社で働き続けたい」と感じられる職場をつくるために、企業が実践できる5つの方法を以下にご紹介します。
2-1.双方向のコミュニケーションを増やす

リモート環境では、相手の表情や感情が伝わりにくく、「自分の意見が届いているのか」「相手がどう感じているのか」がわかりにくいという不安がつきまといます。
これは心理的な距離を広げ、孤独感や疎外感の原因にもなり得ます。
解決の鍵は、一方通行の情報共有ではなく、双方向のコミュニケーションを意識的に増やすことです。
小さな意見交換や雑談でも、対話が積み重なれば「つながっている実感」が生まれ、エンゲージメント向上につながります。
●ポイント
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朝礼や定例会議で「今日のGoodニュース」を一言ずつシェアする
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1on1ミーティングを「週30分」など短時間でも定期的に設ける
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チャットツールに「#雑談」「#趣味」といったテーマ別チャンネルを用意する
2-2.成果主義と柔軟性の両立
リモートでは「働いている姿」が見えにくいため、評価の不透明さが従業員の不安を高めがちです。そのため、勤務態度ではなく成果やアウトプットを軸にした評価制度を整えることが不可欠です。
同時に、在宅勤務のメリットは柔軟性にあります。時間帯や働き方に裁量を持たせれば、従業員は「信頼されている」という実感を得られ、モチベーションやエンゲージメントが高まります。
●ポイント
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業務ごとにKPIを設定し、進捗を週単位で可視化する
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出退勤報告ではなく「成果報告」を習慣化する
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成果達成時には全社員に共有し、バーチャルで称賛し合う仕組みを導入する
2-3.健康とWell-being(ウェルビーイング)のサポート
在宅勤務の大きな課題のひとつが「運動不足」です。長時間座りっぱなしの生活は、身体的な不調や生活習慣病リスクを高め、さらにメンタル面の不調にもつながりやすくなります。
企業が健康支援に取り組むことは単なる福利厚生にとどまらず、従業員が安心して働ける環境づくりの一環です。
健康への配慮が伝われば、従業員は「自分たちを大切にしてくれている」と感じ、エンゲージメントが向上します。
●ポイント
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福利厚生としてオンラインフィットネスやメンタルケアサービスを提供する
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「歩数チャレンジ」など健康施策をチーム単位で行い、ゲーム感覚で運動を促す
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在宅勤務手当を「スタンディングデスク」や「ヨガマット」などの購入にも使えるようにする
2-4.成長機会を確保する
リモート環境では、オフィスのように先輩や上司の働き方を間近で学ぶ機会が減るため、「キャリアアップできないのでは」という不安を抱く従業員も少なくありません。
これを放置すれば、エンゲージメント低下や離職意向の高まりにつながります。
企業はオンライン環境でも成長実感を持てる仕組みを整えることが不可欠です。
学びや挑戦の機会を継続的に提供することで、従業員は「この会社で働き続ける価値がある」と感じやすくなります。
●ポイント
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社内勉強会をオンラインで開催し、録画をアーカイブ化して誰でも視聴可能にする
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キャリア面談を四半期ごとに実施し、目標設定と振り返りを行う
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社外セミナーやeラーニングを勤務時間内で受講できる制度を整える
2-5.ビジョン・企業文化を共有する
在宅勤務では、オフィスの掲示物やイベントのように「文化を体感する機会」が減り、企業理念や価値観が伝わりにくくなります。そのまま放置すれば、帰属意識の低下や組織の一体感の喪失につながりかねません。
だからこそ、リモート環境下では意識的に文化を伝える工夫が求められます。
定期的にビジョンや価値観を共有し、社員が「この会社で働く意味」を感じられる仕組みを作ることが大切です。
●ポイント
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社内報をデジタル化し、社員インタビューや成功事例を掲載する
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チーム単位で「今月のMVP」を選び、全員で共有する
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バリューや理念を浸透させるための社内キャンペーンやオンラインイベントを実施する
在宅勤務(リモートワーク)は、単なる非常時の対応策ではなく、今や働き方の選択肢として定着しました。
しかし、孤独感や評価不安、健康リスク、成長機会の不足、企業文化の希薄化といった課題も見過ごせません。
これらの課題に向き合うためには、従業員エンゲージメントを意識した仕組みづくりが欠かせません。
双方向コミュニケーションの設計、成果主義と柔軟性の両立、健康サポート、キャリア成長の機会提供、ビジョンの共有と文化の醸成などをバランスよく取り入れ、従業員に「この会社で働き続けたい」と思ってもらえる仕組みをつくっていきましょう。
在宅勤務の環境整備は、単に生産性を維持するための施策にとどまらず、従業員が安心して力を発揮し、組織とともに成長できる場をつくることこそが、長期的な企業競争力の源泉となります。
リモートであっても「人と人のつながり」を感じられる職場を実現できるかどうか。そこに、これからの企業の成長と従業員の幸せを両立させる鍵があるのです。
3.リモート環境で効果を発揮する「動画活用」のすすめ
リモートワーク環境では、従来のテキスト資料やメール、オンライン会議だけでは限界があります。情報が一方向的になったり、感情や意図が伝わりにくくなるため、従業員の理解度や納得感にばらつきが生じがちです。3-1.動画がエンゲージメントに効果的な理由
動画には、文字や音声だけでは補えない力があります。そのような課題を解決する手段として注目されているのが「動画活用」です。動画は、情報を効率的かつ感情的にも伝えられる媒体として、エンゲージメント向上に大きな効果を発揮します。
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感情や温度感を共有できる
表情や声のトーンから「熱意」や「誠実さ」が伝わりやすく、受け手は発信者の意図を直感的に理解できます。 -
どこでも・いつでも視聴可能
在宅勤務でもスマートフォンやPCからアクセスでき、時間や場所を問わず情報を受け取れるため、全従業員に均一なメッセージを届けられます。 -
記憶定着率が高い
文章だけの資料よりも、映像と音声を組み合わせた方が記憶に残りやすく、繰り返し視聴できる点も学習や情報浸透に有効です。
3-2.動画を活用すべき具体的なシーン
動画は、日常的な業務から組織文化の浸透まで幅広く活用できます。-
経営層からのメッセージ
経営理念や今後の方針を直接発信することで、従業員に一体感を生み出しやすくなります。 -
教育・研修
マニュアルや操作方法を動画化すれば、従業員は自分のペースで学習でき、理解度も均一化されます。 -
社内コミュニケーション
プロジェクトの進捗紹介や社内イベントの共有を動画にすることで、部署間のつながりや社内文化を感じやすくなります。 -
オンボーディング
新入社員向けに企業文化や社内ルールを動画で説明することで、スムーズな定着と早期戦力化につながります。
3-3.動画活用を成功させるポイント
ただ動画を作るだけでは効果は限定的です。従業員にとって「見やすく」「役立ち」「継続的に利用できる」環境を整えることが大切です。-
短尺で要点を絞る
5〜10分程度を目安に、集中して視聴できる構成にする。 -
字幕やチャプターの追加
多様な働き方に対応するため、字幕や目次機能を設けると理解度が高まる。 -
アーカイブ化とアクセス性の確保
社内ポータルや専用チャンネルで整理し、いつでも振り返り可能にする。
制作・運用の仕組みを整えておくことで、持続的なエンゲージメント向上につながりますので取り入れてみてはいかがでしょうか。
4.まとめ|リモート時代の競争力は「エンゲージメント」にある

在宅勤務(リモートワーク)は、単なる非常時の働き方ではなく、今や人材戦略の中核を担う仕組みとなりました。
しかし、孤独感や評価不安、健康リスク、キャリア機会の不足、文化の希薄化といった課題は依然として存在します。
それらに対応するには、以下の取り組みが欠かせません。
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双方向コミュニケーションの設計
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成果主義と柔軟性の両立
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健康サポートの強化
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成長機会の提供
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文化・ビジョンの共有
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動画による情報発信・学習環境の整備
特に動画は、どこにいても均一に情報を届けられるだけでなく、理解度や記憶定着率を高め、経営メッセージの浸透や人材育成にも有効な手段です。
リモート環境下で「感情」や「温度感」を共有できるツールとして、エンゲージメント施策に欠かせない存在になりつつあります。
リモートワーク時代の競争力は、制度やツールを整えること以上に、従業員がつながりを実感できる環境をいかに設計できるか にかかっています。
エンゲージメントを高める仕組みを戦略的に整えることで、企業の持続的な成長と従業員の幸せを両立させることができるでしょう。
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著者プロフィール

- BST編集部
- HOPEN(旧社名:PRINTBOY)の企画・運営する部門がお届けする、業務改善お役立ち情報サイト”BST”の編集チームです。
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