いま注目の「健康経営」とは?実践企業3社の事例も紹介

  1. HOME
  2. ブランディング
  3. いま注目の「健康経営」とは?実践企業3社の事例も紹介
公開日:2025/08/05 更新日:2025/08/07
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
いま注目の「健康経営」とは?実践企業3社の事例も紹介

「最近、職場の雰囲気がどこか重い…」「採用活動に苦戦している…」という課題はお持ちでしょうか。実は、そのような状況は、一人ひとりの健康状態や職場の心理的安全性が影響を及ぼしているかもしれません。企業全体の活力を高めるため、多くの企業がお取り組みされているのが「健康経営」です。

厚生労働省の令和5年「労働安全衛生調査(実態調査)」では、労働者の82.7%が仕事に関して強いストレスや不安を抱えていると回答し、中でも「仕事の失敗、責任の発生等(39.7%)」「仕事の量(39.4%)」「対人関係(29.6%)」が、大きな要因となっています。これは新入社員から経営層まで、あらゆる世代に共通した課題です。

こうした背景から注目されているのが、企業が戦略的に健康を支援する「健康経営」です。企業ブランディング・採用力・定着率・ESGの評価の向上などにつながる取り組みとして、大企業でも導入が加速しています。

今回の記事では、「健康経営」の基礎から推進のフローと、実践企業の事例を3社ご紹介します。
“健康経営”に関してどんな取り組みを行うかご検討されていらっしゃいましたら、ご参考になりましたら幸いです。

◆目次

  1. なぜ今、「健康経営」が注目されているのか?
  2. 健康経営とは?
    1. 人的資本の質の向上と生産性UP
    2. 採用・定着率の改善と離職コストの削減
    3. ESG対応や投資家からの評価・企業ブランドの強化にもつながる
  3. 健康経営の推進フロー
    1. 経営層による宣言・コミット
    2. 健康経営の推進のための組織体制の整備
    3. 現状把握と課題の収集
    4. 計画・目標の策定
    5. 施策の実行
    6. 評価と改善
  4. 健康経営に取り組んでいる会社の事例3選
    1. 味の素株式会社
    2. キリンホールディングス株式会社
    3. NTT株式会社(旧社名:日本電信電話株式会社)
  5. 社内外に伝えることで、社内浸透と持続性を生む
  6. 健康経営は“企業の未来への投資”です

1.なぜ今、「健康経営」が注目されているのか?

近年、「健康経営」という言葉がビジネスの現場で頻繁に耳にされるようになりました。その背景には、企業を取り巻く環境の大きな変化があります。

まず注目すべきは「人的資本経営」の加速です。上場企業は、人的資本に関する情報開示が求められるようになり、従業員の健康やエンゲージメントといった「人」にまつわる指標が、企業価値を左右する要素として認識され始めました。

※「人的資本経営」に関する詳細は以下の記事をご覧ください。

▼「人的資本経営」に関する記事はこちら
人的資本経営とは?背景と人的資本経営が求められる5つの理由を解説

健康経営は、この人的資本を“戦略的に管理・活用する”ための重要な手段とされています。

さらに、少子高齢化や働き方改革といった社会構造の変化も、企業にとって無視できない課題です。働き手の減少により、限られた人材の能力を最大限に引き出し、長く活躍してもらう環境整備が急務となっているため、健康経営はその解決策として注目されています。

また、メンタルヘルス不調や生活習慣病のリスク顕在化も深刻です。そのため、企業が社員の心身の健康に積極的に取り組むことが、離職防止や生産性向上につながるという認識が広がっています。

こうした取り組みは、単に“福利厚生”にとどまらず、ESG(環境・社会・ガバナンス)経営の観点からも高く評価されるだけでなく、投資家からの評価対象にもなっています。
「人材の確保と活用」「生産性の向上」「企業価値の向上」の全てに直結するため、これからの経営戦略にも欠かせない要素といえます。

2.健康経営とは?

2.健康経営とは?
「健康経営」とは、従業員の健康を経営的な視点で捉え、戦略的に推進する取り組みを指します。この考え方は、経済産業省が提唱しており、企業の持続的な成長や生産性向上を実現するうえで欠かせない経営戦略の一つです。従来、従業員の健康管理は「福利厚生」の一環として位置づけられ、企業にとっては“コスト”という側面が強く見られてきましたが、健康経営は「コスト」ではなく、「未来への投資」として捉えることが特徴です。

それでは、企業が「健康経営」に取り組むべき理由を3つご紹介します。

2-1.人的資本の質の向上と生産性UP

2-1.人的資本の質の向上と生産性UP
健康経営に取り組むべき理由として、従業員が心身ともに健康で働ける環境を整えることで、パフォーマンスやエンゲージメントが向上し、結果的に企業全体の生産性や競争力が高まることが挙げられます。

従業員の健康状態は、そのまま業務パフォーマンスに直結するため、健康を維持・増進することができれば、集中力や判断力が向上し、プレゼンティーズム(出社はしているが十分に力を発揮できていない状態)やアブセンティーズム(欠勤)のリスクが低下します。
そのため、人的資本への投資対効果=人的資本ROIの向上が期待できます。

2-2.採用・定着率の改善と離職コストの削減

「健康経営」の姿勢や取り組みを打ち出すことで、企業の“働きやすさ”が可視化され、求職者への好印象にもつながります。それだけではなく、従業員の満足度やエンゲージメントも高まることで、定着率が上がり、結果として離職による再採用や育成のコスト削減にもつながる効果が期待できます。

2-3.ESG対応や投資家からの評価・企業ブランドの強化にもつながる

2-3.ESG対応や投資家からの評価・企業ブランドの強化にもつながる
健康経営は、ESG(環境・社会・ガバナンス)経営の「S(社会)」に直結する取り組みとしても注目されています。実際に、健康経営に積極的な企業が、外部からの信頼や投資家から良い評価を受けるなどの影響があります。

また、従業員を大切にする企業姿勢は、顧客や地域社会との関係性の構築にもプラスに働き、企業ブランドの価値向上にもつながります。

3.健康経営の推進フロー

健康経営を実践する際には、明確な戦略のもと、組織的・継続的に取り組むことが重要です。ここでは、企業が健康経営を推進するための基本的なフローをご紹介します。

3-1.経営層による宣言・コミット

まず始めに欠かせないのが、経営層からの明確なコミットメントです。健康経営は、現場レベルの施策ではなく、経営戦略の一部として位置づけられるべき取り組みです。そのため、CEOや役員などトップ層が方針を明文化し、社内外に対して公式に発信することが大事といわれています。

これにより、全社的な取り組みとしての土台が築かれ、社員への理解や協力を得やすくなります。

3-2.健康経営の推進のための組織体制の整備

3-2.健康経営の推進のための組織体制の整備
次に、健康経営を担う体制の整備です。企業によっては「CHO(Chief Health Officer/健康最高責任者)」の任命や、専任の健康経営の推進チームを設置することで、継続的な運用が可能になります。
また、産業医や保健師との連携体制を構築することで、専門的な視点からの支援を受けらため、企業として健康経営を推進する際には、環境整備も大切です。

3-3.現状把握と課題の収集

施策を始める前に、まずは現状を正確に把握することが重要です。定期健康診断の結果やストレスチェック、社員アンケートなどを行い収集した情報を活用し、社員の健康状態や職場環境に関する課題を可視化しましょう。データに基づいた施策を検証することで、適切な課題設定や改善策の立案が可能になります。

3-4.計画・目標の策定

3-4.計画・目標の策定
現状分析を踏まえたうえで、具体的な目標やKPI(重要業績評価指標)を設定します。たとえば「定期健診受診率の100%達成」「メンタルヘルス研修の受講率向上」など、数値で追える指標を設けることがポイントです。目指すゴールを明確にすることで、施策の効果測定と改善につながります。

3-5.施策の実行

目標に基づいて、実際の施策を展開していきます。たとえば、運動習慣の促進、禁煙支援、メンタルヘルス対策の研修、定期健診後のフォローアップ制度など、課題に応じた多様な取り組みが考えられます。重要なのは、社員が参加しやすい・継続しやすい仕組みを設計することです。

3-6.評価と改善

施策は一度行えば終わりではなく、定期的な評価と改善のサイクルを回していくことが求められます。設定したKPIに対する達成度を確認し、社員からのフィードバックも取り入れながら内容をアップデートしていくことで、より効果的で持続的な施策になります。

4.健康経営に取り組んでいる会社の事例3選

以下に、健康経営に取り組んでいる会社の事例を3社ご紹介します。
※2025年3月に健康長寿産業連合会が発表した「健康経営先進企業事例集」の情報を参考にまとめております。

4-1.味の素株式会社

味の素グループは、健康経営の目的として「アミノサイエンス®で人・社会・地球のWell-beingに貢献する」を「志」(パーパス)として経営理念を掲げ、従業員がイキイキと働き、イノベーションを創出できるよう従業員の心とからだの健康を維持・増進し、Well-beingを高めるよう取り組んでいらっしゃいます。

・主な課題と目標
【重点課題①】メンタルヘルス不調等のストレス関連疾患の発生予防・早期発見・対応に関する課題
背景:コロナ禍を受けてテレワーク中心の就業する環境下でのストレスにより、健康リスクを高める恐れがあったためスタート。
目標:メンタル休業後の3年後就業継続率
対策:「全従業員を対象とした定期健康診断後の全員面談」・「メンタルヘルス回復及び再就業支援プログラム」

・主な実施内容
①「全従業員を対象とした定期健診時の全員面談」「メンタルヘルス回復及び再就業支援プログラム」
内容:休業者が、自分の「価値観と本来の生きがい」を認識し、ストレスとうまく付き合うことで、なんとか働ける状態でなく、イキイキと働ける状態を目指す支援プログラム
評価:メンタル休業後4年を経過している就業継続率は77.8%・J-ECOHスタディ4年就業継続率61.6%の報告と比較しても良好。

【重点課題②】生活習慣改善(運動・睡眠・食生活等)に関する従業員の課題
背景:全従業員における生活習慣病リスクの増加があったため。在宅勤務・デスクワーク増加に伴う運動不足による懸念があり(BMI・HbA1c等)取り組みをスタート。
目標:主要検診2項目のリスク割合の減少
対策:「定期健診後の全員面談」・「健康パーソナルポータルサイトでの情報提供」・「定期健康診断の新展開」「社食での健康メニュー提供」

・主な実施内容
②「健康パーソナルポータルサイトの活用」・ 「定期健康通信」や「社員食堂での健康メニュー提供」

・食事施策「My Healthランチ」(社員食堂での健康支援)
コンセプト:「おいしくたのしい」「満足感」を満たす標準的な栄養バランスを満たすメニューの提供

ラブベジ®」プロジェクト(野菜摂食率促進の味の素株式会社さまで取り組まれている企画)と連動した特別メニューの提供
野菜摂取促進をテーマにしたイベントと連携した特別メニュー(塩分量も3.0g以下に設定)し、自然と健康になるように導いている。

・従業員の健康関連情報の可視化
My Health活用による個人データの就労情報や健康年齢なども確認し、セルフケア向上に役立つ様々なコンテンツの視聴なども可能。従業員の健康に役立てられるように実施されていると報告しています。

●健康経営の成果
従業員の「健康/Well-being」の好意的回答スコア(満点100)を高水準で維持・向上を目的としている中、2024年度は、84(前年度83)という結果となり、会社の健康経営の取り組みが従業員に好意的評価を受けて、従業員のパフォーマンス向上にも貢献していると報告されました。

4-2.キリンホールディングス株式会社

キリンホールディングス株式会社は、パーパスの1つに「健康」を掲げ、社会課題を解決しながら社会と共に持続的に成長し、社会的価値と経済的価値を両立するCSV(Creating Shared Value(共通価値の創造))経営の実現を目指し、従業員一人ひとりがイキイキと健康な状態で働くことで、高いパフォーマンスを発揮できるよう推進されています。

・主な課題と目標
【重要課題①】生活習慣改善(運動・睡眠・食生活等)に関する従業員の課題
目標:1週間に十分な睡眠がとれている日が3日以上ある人数
実施理由:
生活習慣とプレゼンティーイズム値を確認したところ、特に「睡眠・休息」がプレゼンティーイズム値との相関が高いことが分かった。
別途実施した自社独自調査からも「睡眠」について従業員の関心は高いが行動に移せていないことが分かったため。

・実施内容(一例)
①睡眠偏差値For Bizの健康経営サービスを採用。アンケート回答による偏差値計測をプログラム実施前後で実施し、効果検証を実施
内容:睡眠偏差値(アンケート回答)、スリープコインによる睡眠計測、睡眠セミナー、コラム配信等を実施
評価:睡眠改善プログラムを実施し、十分な睡眠がとれている日数が週に3日以上の従業員 28%から40%に改善されたと報告されています。

【重要課題②】従業員の健康問題に起因する生産性低下防止や事故発生予防に関する課題
目標:AUDIT(飲酒習慣スクリーニングテスト)8点未満割合
71.7%(現在の実績値) → 73.0%(2024年度目標)
実施理由:酒類の製造・販売を生業とする企業グループとして、従業員の適正飲酒を推進し、飲酒習慣を確認するAUDIT(飲酒習慣スクリーニングテスト)を毎年実施されている。コロナ禍終息後の飲酒機会増加後に悪化しており、研修等継続した取り組みを実施している。

・主な実施内容(一例)
②新入社員、新任経営職対象に加え、年に1回定期的に全従業員対象に適正飲酒研修を実施。飲酒習慣の見直しと啓発を行っている
内容:適正飲酒研修とテストの実施
評価:毎年研修を実施しており、実施率は9割以上。アルコール関連問題を担当している酒類事業の従業員の協力のもと、自社内の内製で実施している。飲酒の知識に加え、自社の状況にあわせて研修資料に反映し、啓発に努めていると報告されています。

4-3.NTT株式会社(旧社名:日本電信電話株式会社)

NTT株式会社(旧社名:日本電信電話株式会社)は、中期経営計画に掲げた「EX・CXの高度化による新たな価値の創造とグローバルサステナブル社会を支える企業への成長」を目指して、健康維持・増進に向けた取り組みを行っています。

【重要課題①】健康状態にかかわらず全従業員に対する疾病の発生予防
目標:「プレゼンティーズムによるパフォーマンスの低下割合の低減(QQMethod測定)
内容:メンタルヘルス休職者及びプレゼンティーズムによる損失の低減に向けた取り組み強化のため、全社員アンケートを実施。健康問題を起因としたパフォーマンスの低下割合・損失額を算出し、それらの削減による労働生産性の向上を重要課題として設定していると報告されています。

・主な実施内容(一例)
①簡易・定期的な健康調査(パルスサーベイ)による不調者の早期発見・改善
内容:簡易な問診を定期的に行うことで、自身の変調を把握(セルフケア)及び、上長とのコミュニケーション(ラインケア)を促すサービス

【課題②】生活習慣改善(運動・睡眠・食生活等)に関する従業員の課題
目標:特定保健指導対象者率(低減目標)
内容:重要指標であるEXの向上に必要不可欠である健康増進に向けて、社員の主体的な運動活動の測定・定着を重点課題として設定していると報告されています。

・主な実施内容(一例)
②健康情報の管理・閲覧等によるセルフチェック環境の提供
内容:ストレスチェック、健康診断、及び各種PHRデータを登録・管理し、経年推移など社員自身の心身の健康状態の変化・自身の改善事項などを把握できるサービス
評価:ストレスチェックや健康診断結果の経年推移等の社員意識の向上により、セルフチェック環境を提供することができたと報告されています。

5.社内外に伝えることで、社内浸透と持続性を生む

5.取り組みを社内外に“伝える”ことが、社内浸透と持続性を生む
せっかく始めた健康経営も、社内での認知が低いままでは効果が十分に発揮されないため、施策の内容や目的、成果を社内にわかりやすく「伝えること」が大切です。
健康経営については、様々な訴求方法がありますが社外に発信をする際には、社内報やイントラネット、ポスターなどの告知だけでなく、動画やインタビュー記事を活用した“ストーリー性のある共有”によって、社員の共感と参加意識を高めることができます。
継続的に発信することで、「会社全体で取り組んでいる」意識が芽生え、健康経営の土台となる「心理的安全性」や「エンゲージメントの向上」にもつながっていきますので、インナーブランディングに留めておくのでは勿体ないです。

ぜひ健康経営に関する取り組みを行っている場合は、対外的にもアピールすることで従業員を大切にする姿勢を伝えることができます。ぜひ取り組み内容を発信し、インナーブランディングだけでなく、アウターブランディングも併せて行ってみてはいかがでしょうか。

6.健康経営は“企業の未来への投資”です

働き方が多様化し、従業員一人ひとりの価値が企業の成長に直結する今、健康経営は単なる“福利厚生”ではなく、“経営戦略”としての重要性を増しています。
今回は「健康経営とは何か」という基本から、実践のステップ、さらに先進企業3社の事例、そして社内外への発信の重要性までをお伝えしましたが、今回事例でご紹介したお取り組み以外にも様々な事例があります。

健康経営の効果を持続・最大化するためには、「始めるだけで満足しない」ことがポイントです。健康経営を実施する際には、明確なKPIを設定し、PDCAサイクルを回しながら成果や想いを社内外にしっかり伝えていくことも大切です。
また、健康経営の活動は継続的な活動になります。継続することで、従業員の共感を呼び、組織に定着し、やがて企業価値そのものを高めていくことができるといわれていますので中長期的な取り組みとして進めていくのはいかがでしょうか。

ホープンでは、健康経営に取り組む企業様向けに、採用ページやインナーブランディング動画など、“伝える”ためのコンテンツ制作を幅広くご支援していますので、お気軽にご相談ください。

ホープンのお問い合わせはこちら
▼\おすすめ/採用動画に関するホワイトペーパー
 自社に最適な採用動画の種類や活用事例をお悩み別におすすめをご紹介!簡単入力で入手ください。
 人事・採用ご担当者様向け「採用動画制作ガイド」
 実写?アニメーション?目的別の動画の使い分けガイド
 人事・採用ご担当者様向け「社員インタビュー動画実践ガイド」

▼この記事を読んだ方はこちらの記事もおすすめ!

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

CONTACT

お問い合わせ

当サイトについて気になることがありましたら
お気軽にお問合せください。

資料ダウンロード

オンラインセミナー・研修・イベントやアウトソーシングなど、
お役立ち情報が詰まったホワイトペーパーを配布しています!

失敗しない!パンフレット発注前に知っておきたいこと
×