
近年、企業の中でデザインを重要視する傾向があり、「デザイン」を単なる見た目ではなく、「デザイン経営」としてデザインを経営戦略の中核に据える取り組みを行っています。経済産業省と特許庁が2018年に発表した「デザイン経営宣言」は、企業価値向上や持続的成長のために、経営層がデザインを戦略的に活用する重要性を示しています。
では、なぜ「デザイン経営」が採用力やブランド力を大きく高めるのでしょうか?
今回はデザイン経営の概要や実践ポイントを整理し、企業ブランディングや採用への活用方法を解説いたします。
◆目次
1.デザイン経営とは
1-1.定義と背景
経済産業省・特許庁による定義
日本において「デザイン経営」という言葉が広まった背景には、経済産業省と特許庁が2018年に発表した「デザイン経営宣言」があります。
ここで示された定義は、デザインを単なる見た目や装飾にとどめるのではなく、企業の競争力を高めるための経営資源として位置づけるというものです。
つまり、デザインを製品開発やブランディング、組織文化の形成など経営の中核に取り入れることが、企業の持続的な成長に不可欠だとされています。
「デザインを企業の経営資源として活用する」考え方
従来の日本企業では、デザインは商品の外観や広告のビジュアルといった「仕上げの段階」に位置づけられることが多い傾向にありました。
しかし、デザイン経営ではそれを「経営資源」として捉え直し、経営戦略や事業戦略の初期段階から活用することを重視します。
たとえば、ユーザー体験(UX)の設計やサービス設計にデザイン思考を取り入れることで、顧客価値を高め、結果的に事業の成長を加速させる取り組みがその代表例です。
単なるビジュアルデザインではなく、経営戦略に組み込むことが大切
デザイン経営の最大の特徴は、デザインを単なるビジュアル要素として扱うのではなく、企業の戦略的意思決定に組み込む点にあります。
経営者自身がデザインの重要性を理解し、経営戦略にデザイナーやクリエイターを関与させることで、商品やサービスだけでなく、組織文化やビジネスモデルそのものの革新を実現できます。これにより、価格競争に依存しない独自の価値を創出でき、顧客や社会からの信頼を獲得することにつながります。
1-2.デザイン経営を行うべき3つの理由
ここでは、なぜデザイン経営を行うべきなのかについて、3つの理由をご紹介します。
競争優位性の確立につながる
グローバル市場において、単に「安く・早く・大量に」商品やサービスを提供するだけでは、競合との差別化が難しくなっています。
そのため、競争優位性の確立につなげるために、デザインを活用した独自の価値創造が重要です。
商品やサービスそのもののビジュアルデザインだけでなく、ブランドのあり方や世界観、伝え方、意思決定の軸にまでデザインを組み込みことで、他社が模倣されにくい独自性が生まれます。
デザインを経営戦略に組み込み「競争から抜け出して、自分たちの土俵で勝つ」ための経営戦略を行うことで、価格競争に巻き込まれず選ばれる企業になります。
例えば、Apple(アップル)のiPhoneがその代表例になります。このように他社に模倣されにくいデザイン経営を行うことにより、長期的な競争優位性を確立することが可能となります。
顧客体験価値(CX)の向上によるブランド信頼度UP
現代の消費者は、製品やサービスそのものの性能や価格だけではなく、購入前後を含めた一連の「体験」全体を重視するようになっています。
商品の見つけやすさ、購入のしやすさ、アフターサポートの安心感など、あらゆる接点で得られる体験がブランド評価に直結するのです。
デザイン経営は、この顧客体験全体を一貫して設計する役割を担っており、UIやパッケージデザインといった見た目の美しさだけでなく、店舗やサイトでの導線設計、コミュニケーションのトーン&マナー、さらにはサービス提供プロセスに至るまで「体験をデザインする」ことによって、顧客に快適さや安心感を提供します。
その結果、信頼につながり「また利用したい」「この会社の商品だから選ぶ」といったブランドへの信頼や共感が生まれ、長期的なファン作りにつながります。
例えば、スターバックスは単なるコーヒー販売にとどまらず、店舗空間や接客体験を含めて“心地よいひととき”をデザインすることで、CXを向上させています。
組織のイノベーションの促進につながる
デザイン経営は、単に商品やサービスの見た目を整えるだけでなく、組織の思考プロセスや意思決定の方法にも影響を与えます。デザインの発想を経営に取り入れることで、従来の延長線上にない新しいアイデアやビジネスモデルを生み出し、組織のイノベーションを促進させます。
デザイン的なアプローチでは、「ユーザー視点」「仮説検証」「プロトタイピング」といった手法が重視され、従来の効率性重視の枠組みでは見過ごされがちな課題を発見し、スピーディーに解決策を形にすることが可能になります。結果として、市場変化への柔軟な対応や、新しい価値の創出につなげることができます。
2.デザイン経営を行っている企業の取り組み
デザイン経営宣言の発表以降、実際にデザイン経営を行うにあたり企業で取り組まれている事例をご紹介します。
2-1.経営意思決定にデザイン責任者を参画させる
ある企業では、デザイン部門に「チーフデザインオフィサー(CDO)」を設置し、経営会議へデザイン責任者を参加する取り組みを行っている企業もあります。これにより、プロダクト開発や顧客体験設計において、初期段階からデザイン視点を反映することができます。
2-2.組織全体にデザイン視点を浸透させる
デザインは一部の専門部署に任せるものではなく、組織全体で共有すべき思考法・文化として捉え直し、全社員がユーザー視点を持つ仕組みづくりを行っている企業もあります。
例えば、社員研修にデザイン思考を取り入れたり、部署横断でデザインのワークショップを行うなど、企業の持続的成長や社会からの信頼獲得のための施策として取り組みを行っています。
3.デザイン経営を企業ブランディングに活かすポイント
デザイン経営は顧客向けの価値創出にとどまらず、採用や企業ブランド発信の基盤づくりにも効果的です。企業の魅力を一貫性のあるビジュアルや体験設計によって「伝わるカタチ」にすることで、人材獲得やブランド信頼の構築につながります。そこで、ブランディングのための具体例をご紹介します。
3-1.ブランドムービー
デザイン経営の目的のひとつは、ブランドの世界観を視覚的・感情的に伝えることにあります。
なかでも「ブランドムービー」は、静止画やテキストでは伝わりにくい企業の価値観・雰囲気・人の魅力を、短時間で効果的に届けられる手段です。
求職者が「応募するかどうか」を左右する重要な要素となり、お客様やパートナー様に向けた信頼構築にも大きく貢献します。
3-2.コーポレートサイトの刷新
デザイン経営では、ブランド戦略と一貫性のあるビジュアルやUX設計を重視し、サイト刷新を通じて企業理念や強みを最新の形で反映します。これにより、企業の信頼性と魅力を高めることができます。
3-3.インタビュー動画

デザイン経営は「顧客体験価値(CX)」を重視します。インタビュー形式でリアルな声を映像化することで、ブランド価値が具体的に伝わり、採用・営業の双方における信頼獲得につながります。
インタビュー動画の中でも特にお客様の成功事例は、広告的な押し付け感が少なく、第三者視点としての説得力と共感を生みやすいのが魅力です。
3-4.ブランドガイドラインの作成
成功するデザイン経営の前提には、一貫性のあるブランド表現があります。ロゴ・カラー・フォント・写真・文章トーンといった基準を明確化したブランドガイドラインを策定することで、あらゆる制作物に統一感を持たせることができます。その結果、社内外で一貫したブランド体験を提供でき、認知度や信頼度の向上につながります。
4.まとめ|デザイン経営は未来をカタチにする戦略投資
デザイン経営は、単なるビジュアルや表層的なデザインではなく、経営資源としてのデザインを活用する考え方です。
経済産業省・特許庁による「デザイン経営宣言」にも示されている通り、ビジョンやブランドをデザインを通じて明確化し、経営戦略に組み込むことが企業の持続的な成長や競争力強化につながります。
また、企業の持続的な成長や競争力を強化するには、企業で活躍する人材の力が必要不可欠です。デザイン経営での戦略を踏まえて、様々なコミュニケーションのデザインにも取り入れていきましょう。
こうしたコンテンツ制作への投資は、採用コスト削減や離職率低下、さらには売上向上といったROIにも直結します。
デザイン経営の実践を企業のの未来をカタチにするための戦略投資としてご検討してみてはいかがでしょうか。
ホープンは50年以上にわたり、印刷から動画、Webまで「伝わる」コンテンツ制作をご支援しておりますので、お気軽にご相談ください。
▼\おすすめ/採用動画に関するホワイトペーパー
自社に最適な採用動画の種類や活用事例をお悩み別におすすめをご紹介!簡単入力で入手ください。
人事・採用ご担当者様向け「採用動画制作ガイド」
実写?アニメーション?目的別の動画の使い分けガイド
人事・採用ご担当者様向け「社員インタビュー動画実践ガイド」
▼この記事を読んだ方はこちらの記事もおすすめ!