
この記事は、ホープンが創業より続けているアナログコミュニケーション“お元気ですかはがき”のテーマと連動した内容となっております。
「風が運ぶ季節だより」シリーズ其の三では、秋に吹く風を意味する「金風(きんぷう/ごんぷう)」をテーマにお届けします。
「金風」と聞くと、どこかきらきらと輝くような風景を思い浮かべる方もいらっしゃるかもしれませんが、この「金」という文字は風の色を表しているわけではありません。では、何を表しているのでしょうか。
今回は、秋の風「金風」の意味や由来、『万葉集』や『禅語』に見られる古くからの使われ方、現代の手紙やビジネス文書に受け継がれている表現についてご紹介します。
秋ならではの情景を思い浮かべながら、「金風」という美しい季節の言葉をお楽しみください。
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◆目次
1.「金風」とは?
1-1. 「秋の風」を意味する金風
「金風(きんぷう/ごんぷう)」とは、秋に吹く風、「秋風」を表す言葉です。小学館『デジタル大辞泉』では、「金風」について「五行で、秋は金にあたるところから」、秋の風「秋風」を意味すると説明されています。
1-2. 「金風」の読み方の違い
俳句の世界では「金風(きんぷう)」と読み、秋の季語として使われていますが、古代中国から伝わった「五行説」では、秋は「金(ごん)」にあたるとされることから、秋風を「金風(ごんぷう)」と呼びます。ここでの「ごん」は、五行における「金」の読み方に由来しています。
では、なぜ五行説では秋が「金」にあたるのでしょうか。次に、その背景を見ていきましょう。
1-3. 「五行説」とは?

「五行説」とは、自然界をはじめとするさまざまなものを「木・火・土・金・水」の5つに当てはめて捉える、古代中国に由来する考え方です。
五行では季節もそれぞれに分類され、旧暦の秋にあたる7月~9月は「金(ごん)」の季節とされました。そのため、秋に吹く風は「金風」と呼ばれるようになったと考えられます。
このように言葉の成り立ちを知ると、「金風」という二文字から、自然や季節を体系的に捉えてきた昔の人々の考え方が想像できます。
一方で、現代の私たちが「金風」という言葉から、黄金色の秋景色を思い浮かべるのも、この言葉ならではの楽しみ方といえるのではないでしょうか。
2.古くから使われてきた「金風」という言葉
「金風」という言葉は、古くから日本の文学や文化の中で秋を表す言葉として使われ、時代を越えて受け継がれてきました。ここでは、古典文学や禅語、そして現代の手紙やビジネス文書に見られる「金風」についてご紹介します。
2-1. 日本でも古くから使われてきた「金風」

日本における「金風」の歴史は古く、奈良時代の文学にもその言葉を見ることができます。日本最古の歌集として知られる『万葉集』巻九・1700番には、「金風」と記された歌が残されています。
秋風(あきかぜ)に 山吹の瀬の 鳴るなへに 天雲翔る 雁に逢へるかも
奈良県立万葉文化館「万葉百科」では、この歌の原文は「金風 山吹瀬乃 響苗 天雲翔 鴈相鴨」と記されており、読み下し文では冒頭の「金風」にあたる部分を「あきかぜ」と読んでいます。
原文では「秋風」ではなく「金風」という文字が用いられていることからも、「金風」という言葉が古くから日本の文学の中で使われていたことがわかります。
秋の風や川のせせらぎ、空を飛ぶ雁など、自然の情景を言葉に映し出した一首ですが、こうした歌からも、昔の人々が身近な自然の変化を通して秋の訪れを感じ、それを豊かな言葉で表現してきたことがうかがえます。
2-2. 禅語にも登場する「金風」|体露金風
「金風」という言葉は、文学作品だけでなく禅の世界にも登場します。そのひとつが「体露金風(たいろきんぷう)」という禅語です。この言葉は、中国の禅書『碧巌録(へきがんろく)』第二十七則に登場します。
「体露金風」は、一人の僧が雲門禅師に「樹々が枯れ、葉も落ち尽くした時はどう思いますか」と問いかけたところ、雲門禅師が「体露金風」と答えたという問答に由来します。
「体露」とは覆い隠すものがなく、ありのままの姿が現れていること。
この言葉には、葉が落ちていく自然の姿を通して、さまざまな執着や迷いから離れ、目の前の現実をありのまま受け入れる禅の境地が表されているといいます。
「金風」という季節の言葉が、禅の世界では人の生き方や心のありようを伝える表現としても用いられてきたことがわかります。
2-3. 現代にも受け継がれる「金風」|ビジネス文書の時候の挨拶にも

古典文学や禅語に登場する「金風」は、現代にも受け継がれています。
その一例が、手紙やビジネス文書で使われる「金風の候(きんぷうのこう)」という表現です。
「金風の候」は、秋風が感じられる季節を表した、改まった印象の時候の挨拶です。
たとえば、「金風の候 ますますご清栄のこととお慶び申し上げます」といった形で、秋の挨拶に使用されています。
普段の会話で「金風」という言葉を耳にする機会は少ないかもしれませんが、現代でも手紙や挨拶文など、人と人とのコミュニケーションの中で使われています。
メールやチャットなど簡潔なコミュニケーションが増えた現代だからこそ、手紙や文書に季節を感じさせる言葉を添えることで、相手を思いやる気持ちとともに、日本らしい季節感を届けることができます。
3.秋晴れの空と爽やかな風

夏から秋へと季節が進むにつれて、空や風の様子も少しずつ変わっていきます。気象庁では「秋晴れ」のことを「秋のよく晴れわたった天気」としています。
秋晴れをもたらすのは、乾燥した性質を持つ、大陸生まれの移動性高気圧です。空気中の水分が少ないため雲が発生しにくく、澄んだ空が広がります。また、空気が乾燥している夜には、地表面の熱が放射によって奪われ、朝晩に冷え込むことがあります。この現象は、天気予報などで耳にする「放射冷却」と呼ばれています。
夏の蒸し暑さがやわらぎ、風に涼しさを感じるようになると、「秋が来た!」と実感する方も多いのではないでしょうか。目には見えない風だからこそ、その温度や香り、周囲の景色の変化によって、季節の移ろいを感じ取ることができます。
4. 今回のデザインポイント
4-1. デザインへのこだわり|金風が運ぶ秋の情景を一枚に

今回の「お元気ですかはがき」は、秋に吹く風を表す「金風」をテーマに、明るく輝く月とススキを組み合わせ、秋の訪れを感じられる一枚にデザインいたしました。
デザインの上部には、はがきからはみ出すほどの大きな満月を配置し、秋の情景をやさしく包み込むような構図にしています。月の下方には、軽やかに跳ねるうさぎのシルエットを添え、お月見を思わせる季節感とともに、静かな風景の中に動きと親しみやすさを加えました。
デザインの下部には、ススキとしなやかに伸びる葉を重ね、風にそよぐ様子を表現しました。また、月のまわりにあしらった霞模様や縦書きの文字組みによって、和の趣を演出しています。
月を見上げ、ススキを揺らす風を感じていただけるような、日本の秋ならではの穏やかな情景に仕上げました。
4-2. 色彩へのこだわり|金色を基調に、秋の情景を表現
今回のデザインは、「金風」という言葉から連想される、黄色・金色・黄土色を中心とした、温かみのある色彩でまとめました。
大きく描いた満月には、秋のやわらかな月明かりを思わせる淡い黄色を用い、明るさに濃淡をつけることで、穏やかで奥行きのある印象に仕上げています。
文字や雲の意匠には、落ち着いた黄土色や茶色を取り入れ、全体を引き締めながら、日本の秋ならではの風情を表現しました。また、ススキには黄金色を中心に使用し、葉にはやわらかな緑を加え、秋の季節を感じていただける色合いにしました。
全体の彩度は鮮やかになりすぎないように抑え、金色のあたたかさと白い余白の静けさを組み合わせることで、穏やかで上品な秋の空気感を表現しています。
4-3. フォントへのこだわり|秋の情景に寄り添う2種類の書体

今回のデザインでは2種類の書体を使いました。タイトルには「ココン」という書体を使用しています。
ココンは、レトロであどけない雰囲気のデザイン書体で、文章を組んだときに親しみやすさを演出することができます。
満月やススキ、軽やかに跳ねるうさぎがつくる和の情景に寄り添う書体を選ぶことで、タイトルそのものからも秋らしいぬくもりや趣を感じられるようにしました。
本文の書体には、「A1ゴシック」を使用しました。当初はタイトルと本文を同じ書体でまとめていましたが、文章部分は、より内容をスムーズに読み取れることを重視し、本文の書体を変更しました。
A1ゴシックは、ゴシック体ならではの明瞭さを持ちながらも、活字風の温かみのある書体です。縦組みで使用したときも、文字の流れを追いやすいよう設計しました。
4-4. 印刷紙へのこだわり|秋の情景を紙からも感じる「かぐや」
今回、ファンシーペーパーの「かぐや」という紙の中から「満月」という白色を選定しました。「かぐや」は、月の表面に広がるクレーターのような凹凸感を、エンボスによって紙の表面に表現したファンシーペーパーです。「ファンシーペーパー」とは、色や模様、風合い、手触りなどに特徴がある、デザイン性の高い特殊紙の総称です。
「満月」以外にも、「三日月」「上弦」「下弦」「十三夜」「有明」「新月」など、月から連想される名前がそれぞれの色に付けられていて、紙の質感だけでなく名前からも月の世界を感じることができます。
「金風」は、秋に吹く風を表す言葉ですが、秋の風が吹く季節は、空気が澄み、秋の空に浮かぶ月の美しさも際立ちます。そんな秋ならではの情景を、デザインだけでなく秋の夜空を思わせる「かぐや」の紙からも、感じていただけましたら幸いです。
「かぐや」の紙ならではの手ざわりや凹凸は、デジタルでは伝えきれません。紙の質感などは実際の紙でご確認いただけたらと思います。
以下のフォームから「お元気ですかはがきのサンプル」のお申込みも可能ですので、ご興味がございましたら、ぜひお受け取りください。
5. まとめ|金風が運ぶ、秋の気配

「金風」は、秋に吹く風を意味する言葉で、時代を越えて受け継がれてきました。由来をたどると五行説の「金」から生まれた言葉ですが、現代の私たちがその二文字から、秋の風景を思い浮かべるのも、この言葉ならではの楽しみ方ではないでしょうか。今回の「お元気ですかはがき」を通じて、秋を感じていただけましたら幸いです。
ホープンでは、「お元気ですかはがき」のように、想いや季節感を届けるコミュニケーションツールの制作をご支援しております。
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